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- 2006.08.01
- よくある質問
最近オール電化のお宅やマンションが増えてきて、外来で上記のようなことをよく聞かれます。つまりは電磁波の妊娠や胎児に対する影響はどうなのかという趣旨のご質問ですが、結論から申しますと「現時点では悪影響があるかどうか分からないが、少なくとも悪影響があるという確たる証拠はない」ということになると思います。
電磁波の健康への影響は、何年か前に高圧送電線の周辺で小児白血病が多いという疫学調査結果が出たり、またそれを否定する報告がなされたりと、その危険性については現時点では明確な位置づけがなされていないのが現状です。Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E7%A3%81%E6%B3%A2)によると、WHOも送電線などから発生する低周波磁場を「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」(Possibly carcinogenic to humans)と分類しているようですが、これはコーヒーやガソリンエンジンの排ガスと同じレベル(2001年)です。
残念ながら現代社会に暮らして文明の恩恵を受ける限り、電磁波とは無縁ではいられません。また電磁波だけではなく、食物中には種々の環境汚染物質も混入しています。無農薬で育てた野菜や天然ものの魚ですら、低レベルながらダイオキシンや水銀を含有しています。また出産後の赤ちゃんが口にする母乳中のダイオキシン濃度が、比較的高レベルであることもよく知られています。しかし生体には種々の防衛システムが備わっていますので、赤ちゃんが簡単にやられてしまうわけではありません。
電磁波についてはインターネット上でその危険性を喧伝する情報が氾濫しています。私自身は、稼働中の電子レンジやIHの機器に用もないのにへばりつくのは避けた方が良いですが、過度に敏感になる必要はないと思いますがいかがでしょうか。
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- 2006.07.31
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- 2006.07.20
- 役に立つ?情報
最近新聞などで、分娩可能な施設が減少しているとの報道を目にすることが多くなりました。特に山間部などでの影響が深刻なようで、地域によっては分娩施設まで2-3時間もかかることもあるようです。
しかし実は日本のように、分娩可能な施設が多数あって施設を選んで分娩できるのは例外的です。米英など多くの先進国は医療圏に1つの大規模分娩施設を整備するセンター分娩制をとっており、私が滞在した英国ニューカッスル大学、Royal Victoria Infirmaryの分娩センターも、市内だけでなく周辺地域(人口ベースで数十万人)から年間約5000の分娩を受け入れていました。
こういった効率優先のセンター分娩制ではなく、ホスピタリティーあふれる助産院から、最先端の設備とスタッフをそろえた大学病院まで、種々の施設から分娩場所を選択できる日本は、妊婦さんにとって非常に恵まれた環境にあるといえるかも知れません。
だからこそ分娩施設の選択は大事なことだと思います。ホスピタリティーを考えれば一人の助産師が付ききりで分娩介助を行い、母乳・育児を指導する助産院にかなう施設はありません。逆に、母児の緊急事態への対応の懐の深さでは大学病院などの高度医療機関の方に分があります。また自宅から分娩施設までの距離は近いほうが有利です。ただ母児の緊急事態も、「有効な陣痛が来ているのに分娩が進行しない」、「胎児がこれ以上のストレスに耐えられない」などの理由で陣痛が来てから帝王切開が必要となる局面は時に生じますが、一刻を争わなければ母児の生命に関わるようなことは稀です。またほとんどの分娩は、陣痛が来て分娩にいたるまで数時間から十数時間かかるため、分娩施設が自宅のとても近いところにないといけないわけではあません。
SACRAでは事前にお書きいただいたバースプランを出来る限り尊重しながら、母児の安全を第一に考えた分娩管理を行っています。そのため胎児心拍の異常の有無を確認するために分娩監視装置を装着し、分娩時の出血に備えて静脈ルート確保(ブドウ糖の点滴)も行います。また緊急時に備えて大学と連携しながら、私と橋本先生の常勤医師2名で緊急帝王切開などに対応できる体制をとっています。
分娩施設を選ぶのに、何を第一義と考えるかは患者様それぞれ違うと思います。もし「分娩監視装置も静脈ルート確保もいらない、とにかくホスピタリティーあふれる“自然”な分娩をしたい」ということなら、SACRAよりも助産院が最適ということになります。それ以外にも、担当の医師や他のスタッフとの相性なども大事なポイントだと思います。とにかく、ご自身が納得できる施設を選んで分娩されることが一番だと思います。
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- 2006.07.12
- よくある質問
「妊娠5ヶ月に入ったら戌の日に安産祈願の腹帯を巻く」のが常識、というのは実は日本だけのようです。私も詳しく調べたわけではありませんが、中国にもそのような風習は無いのだとか。少なくとも私がいた頃の英国の妊婦さんは、皆さん腹帯ではなく当時流行していた臍だしシャツを着ておられました(笑)。
腹帯の歴史と巻き方については、All About“図入り解説で腹帯を大解剖!腹帯の由来・種類・巻き方”(http://allabout.co.jp/children/childbirth/closeup/CU20020519/)に詳しく述べられています。私自身は、日本の文化である「大切なものを包む、風呂敷の文化」と大いに関連すると思いますがいかがでしょうか。
腹帯は医学的には必ずしも必要というわけではありません。しかし大切なお腹は冷やすよりは暖めた方が良く、それなりの効果もあると考えられます。ただし、あまり締め付け過ぎると背骨と子宮の間にある下大静脈や腹腔神経節が圧迫されて、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)の発症に関与するとの指摘もあります。
というわけで結論です。
腹帯は医学的には必ずしも必要ありませんが、大切な赤ちゃんの健やかな誕生を心待ちにされるおじいちゃん・おばあちゃんの意見も聞いて、あまりきつくない程度に巻かれるのが良いのではないでしょうか。またこれからの暑い季節は、さらしの腹帯を何重にも巻かれる必要はないように思います。
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- 2006.07.04
- よくある質問
妊娠中に自転車・自動車に乗ってよいかという質問もよくお受けします。
たまに耳にする、「自転車に乗ると振動のために流産する」という話は医学的には根拠が乏しいと思われますが、妊娠してお腹が出てくると体のバランス感覚も変化してきて転倒などの危険があり、自転車に乗ることはあまり勧められません。お買い物などで荷物が多い場合は、荷物だけを載せて自転車を押されるほうがよいと思います。
自動車は、交通事故のことを考えると乗らないに越したことはありません。特に妊娠末期にご自身が運転して事故にあわれた場合は、ハンドルで腹部が圧迫されて、予期しないような重大な結果につながる可能性もあります。またシートベルトは重大事故の際の母体の救命を考えるとしたほうが安全ですが、妊婦のために設計されたものではありません。
ただし交通事故に巻き込まれる確立は高いわけではありませんので、遠隔地に行かなければならなくて、他の交通機関が極端に不便であるのなら、注意して自動車に乗られるのも1つの方法です。
いずれにしても、ある場所に移動するにあたっては、「そこに行かなければならないのか」、「行かなければならないなら、どの移動手段が楽で安全か」を考えて移動手段を決められれば良いと思います。
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- 2006.07.03
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- 2006.06.30
- よくある質問
夏休みも近くなり、最近外来で「妊娠中に旅行に行っていいですか?」とよく質問されます。今日はそんな時にいつもお答えしていることを書きたいと思います。
旅行は妊娠だけのことを考えれば、飛行機などの過密状態でSARS(重症急性呼吸器症候群)に限らず種々のウイルスに感染したり、移動中に事故に巻き込まれる可能性もあり、妊娠中は避けた方が無難ということになります。しかし時期さえ選べば、妊娠中でも旅行を楽しんでいただくことは不可能ではありません。たとえば妊娠初期や末期には勧められませんが、いわゆる安定期(妊娠20週~)に入ってから妊娠31週くらいまでは、海外も含めて比較的安全にご旅行いただけると思います。
もちろん旅行に行かれる場合は、無理なプランやご馳走の食べすぎなどを慎み、飛行機などを利用される場合は手洗い・うがいの励行、そして長時間移動の場合は足を動かすなどして深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)などの予防を心がける必要があります。また念のため、母子手帳も持参下さい。海外旅行の場合は、万一に備えた英文の紹介状も作成できますのでご相談下さい。また車で移動される場合は、くれぐれも交通事故には気をつけて、余裕を持ったスケジュールを組まれることをお勧めします。
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- 2006.06.21
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- 2006.06.15
- 役に立つ?情報
最近メールで複数の方から、「不妊治療に通っていて通常の治療ではなかなか結果が出ない。そろそろステップアップを考えるが、夫があまり協力的ではない。どうすればよいか?」とのご質問をいただきました。ご主人が躊躇われる理由はそれぞれですが、人口受精や体外受精のような人工的な操作が加わることに抵抗があったり、精液検査などのために奥様と一緒に産婦人科に通うのは抵抗がある、などのようです。
確かに赤ちゃんがいないことが、何らお二人の関係や、奥様の女性らしさを損なうわけではありません。「自然にまかせるのが一番、だめならそれでもよい」というのも一つの考え方だと思います。
ただここで知っておいて頂きたいのは、最先端の不妊治療であっても、戻された胚が子宮に宿って赤ちゃんになっていくほとんどの過程は、自然の妊娠と変わらないということです。精子が少ないときなどに行う顕微授精(ICSI)にしても、極細のガラスチューブを用いて精子を卵子に注入する操作は高度の熟練を要して確かに人工的ですが、受精卵が細胞分裂して胚になっていくのは受精卵自体の力によるものです。さらに子宮内にもどされた胚が子宮内膜に着床して胎児となっていく過程は、全く自然に起こる妊娠と同じです。過去に使われた「試験管ベビー」という言葉は、全く実態に即さないものです。
もしご主人も強く赤ちゃんを望まれているのなら、やはり奥様と同時にご主人に対する検査も進めていくのが効率的です。それには男性にとって抵抗が多い精液検査なども含まれますが、事前にご予約いただけば自宅で採取した精液で検査を行うことも可能です。もちろんその結果、精子数が少なかったり、運動率が悪かったりしてショックを受けることもあるかもしれませんが、逆にいえば原因がわかれば対策を立てることもできるようになります。
SACRAの不妊外来には多くのご夫婦が一緒に治療に通われています。現在受診をためらわれているご主人様も一人で悩まずに思い切って奥様と一緒に来院いただいて、疑問点を橋本先生に質問されれば、徐々に道が開けることもあるかと思います。
もちろんステップアップだけが結果に結びつくわけではありません。お二人の意見がなかなか合わないなら、いっそしばらく治療を休んでみるのもひとつの方法です。治療のストレスから開放されて、かえってよい結果がでることもあります。
実際はなかなか難しいのですが、意見が合わないときこそお互いの考えに耳を傾けてみることが大事だと思います。
蛇足です。以前にも書きましたが葉酸は妊娠初期から重要な栄養素です。不妊外来に通院中の方々は来るべき妊娠にそなえて、葉酸を多く含む緑黄色野菜の摂取をお願いします。
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- 2006.06.01
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