-
- 2006.05.24
- 役に立つ?情報
今日は食べ物のお話です。SACRAでは分娩後のお母様のために、杉田料理長はじめ厨房スタッフが心をこめて作ったお料理をお出ししています。その中で、メインディッシュではないのですが私が特に気にいっているのが、この杉田さん特製の「体にやさしい食育サラダ」です。
ひよこ豆、えんどう豆、いんげん豆などに、ひじき、緑黄色野菜が入っていて色取りだけではなく、お豆の良質な蛋白と、ひじきの鉄分・カルシウム、お野菜のビタミン類をおいしく食べることが出来ます。食育というと何か難しい気がしますが、妊娠中・授乳中のお母様にとっては、食事はご自身の体だけではなく、大切な赤ちゃんの体を作る材料です。栄養バランスを考えながら、いろいろ工夫するとおいしくいただけますよ。
杉田さんによると、簡単なレシピだそうですのでぜひ皆さんも試してみてはいかがでしょうか?
材料
ミックスビーンズ
芽ひじき
トマト(小さめに切ったもの)
みじん切りした玉ねぎ
パプリカ(赤、黄)、アボガドなどいろいろな野菜
SACRAではこれに特性のドレッシングをかけていただきます。ドレッシングは、レモン汁とワインビネガーを混合して塩コショウで味を調え、最後にオリーブオイルを混ぜて作るそうですが、分量は杉田料理長の舌加減だそうです。
-
- 2006.05.15
- 役に立つ?情報
前回帝王切開や骨盤位など、帝王切開での分娩が予定されている方を除き、妊娠10ヶ月に入ったら、お腹が張ってかまいませんからどんどん動いてください。特に初産婦さんは、長めの散歩やきつめの家事を積極的におこなって、よくお腹が張るようにがんばってください。
これは感覚的にもご理解いただけると思いますが、来るべき分娩の準備状態を整え、陣痛を引き起こす呼び水となるためです。
陣痛・分娩のメカニズムについては比較的よく研究されており、陣痛の発来と子宮頚管(子宮の出口)の熟化と開大が密接に関連して進行することが知られています。またその反応は、ばい菌に対する炎症反応に酷似していて、白血球の浸潤が陣痛の発来と子宮口の開大に大きな役割を果たすことも知られています。私も留学中にこの分野の研究に携わり、分娩準備状態の進行(子宮頚管の熟化)とともに子宮頚管にマクロファージという白血球が増加してくること(Macrophages and not granulocytes are involved in cervical ripening. Sakamoto Y et al. J Reprod Immunol. 2005 Aug;66(2):161-73)、そして陣痛発来後には顆粒球という白血球が劇的に浸潤してくるが、そのメカニズムにはインターロイキン-8という物質を介した一種の連鎖反応が考えられること(Interleukin-8 is involved in cervical dilatation but not in prelabour cervical ripening. Sakamoto Y et al. Clin Exp Immunol. 2004 Oct;138(1):151-7.)を報告しました。しかしこれらの成績からは、陣痛発来の引き金そのものは明らかになりませんでした。
それが最近の研究で、子宮頚管に存在するある種の細胞に物理的な引き伸ばし(進展)刺激が加わると、種々の生理活性物質を産生することが報告されました。それらの中には子宮頚管を熟化させる酵素群や、白血球を呼び込む作用を持つインターロイキンー8も含まれます。妊娠10ヶ月に入ったら赤ちゃんの頭は骨盤内に入ってきますので、よく動いてお腹を張らせることは子宮頚管の熟化を進め、陣痛発来の呼び水となりうることを理論的に裏付ける成績と考えられます。
SACRAでは予定日を超過してもすぐに陣痛促進剤は使用せず、胎児の状況を確認しながら出来るだけ自然の陣痛を待ちます。もし予定日をかなり超過して41週を超えていくことになると、陣痛促進剤の慎重な使用も選択枝となりますが、子宮頚管が柔らかくなって開いておれば、比較的安全に使用することが出来ます。
写真のワンちゃんたちのように、というわけではありませんが、10ヶ月に入ったらよく動いてお腹を張らせることが、安産の極意?だと思ってがんばってください。
もちろんあまり激しい運動はお勧めしません。転んだりしないように注意しながら、散歩や家事中心の運動で結構です。
-
- 2006.05.11
- 役に立つ?情報
晩婚化の影響もあり、最近は35歳以上で妊娠・分娩は決して珍しいことではありません。特に初産で35歳以上の方は高齢初産として慎重に管理することになりますが、経産婦さんでも、加齢に伴って妊娠・分娩のリスク(危険)はある程度増加します。
加齢とともに増加する危険としては、妊娠中毒症(妊娠高血圧腎症)発生率の増加、帝王切開率の上昇、分娩時出血量の増加などが挙げられますが、これらの母体合併症は適切な管理(医学的管理だけでなく、ご自身の体重管理や生活態度の管理を含む)によりある程度防ぐことが可能です。しかし、卵細胞の加齢による胎児の異常、具体的にはダウン症などの染色体異常は、年齢とともに徐々に上昇していきます。これは母親の卵細胞が46本の染色体(1個1個の細胞に含まれる遺伝情報の設計図)から、父親の精子由来の23本の染色体と合わさって46本になるために、半数の23本に減数分裂する際に生じたトラブルを原因とするものです。生じたトラブルが高度なら受精・着床に至らなかったり、妊娠初期に流産になると考えられますが、ダウン症のように21番目の染色体が1本多いものの胚の発生には大きな問題がない場合には、そのまま発生が続いて胎児となって行きます。ただしその発症率は、ダウン症を例にとれば35歳で1 / 270(0.3%)、40歳で 1 / 100(1%)と、20歳の1 / 1000(0.1%)に比べれば高いものの、決して高い数字ではありません。
この胎児の染色体異常については、技術的には出生前診断が可能です。これは羊水検査といって胎児のまわりの羊水を針を用いて採取し、そこに含まれる胎児細胞の染色体を分析する方法です。ただしこの検査には流産の危険があります。一般的に流産の可能性は0.3%程度とされますので、上述のダウン症の発生頻度を考えると、少なくとも35歳未満の方には流産の危険の方が大きいため行うべきではないということになります。
羊水検査以外の出生前検査としては、母体の血液検査により胎児の染色体異常を含めた異常を推定する方法(トリプルマーカー検査)がありますが、正確性が低いためかえって臨床現場に混乱を招いた歴史があり、現在はあまり行われていません。
何れにしてもこれらの検査は、胎児の選別につながりかねないという倫理的に大きな問題を含んでいます。また、赤ちゃんの異常は染色体異常を伴わないものも多いため、出生前検査の結果が正常でも、赤ちゃんが100%正常であるとは言い切れないという問題もあります。
いっそこのような検査が無ければとも思いますが、やはり35歳以上の妊婦さんは、出生前検査を受けるにしろ受けられないにしろ、その意味を十分理解された上で主体的に判断されることが望ましいと考えています。
SACRAでは、以前にこのブログに記しましたように超音波により胎児の形態的な異常の有無について詳細に評価しています(http://blog.livedoor.jp/sacra_lc/archives/50193218.html)。しかし上述の胎児染色体の出生前検査は行っていません。ただし、35歳以上の方には出生前診断について説明して、御希望なら施行可能な施設にセカンドオピニオンを目的として紹介することは行っています。
-
- 2006.05.10
- 連絡事項
初期教室(妊娠5~6ヶ月:16~23週が対象):6/25(日)9:00受付、9:10~10:20
中期教室(妊娠7~8ヶ月:24~31週が対象):6/11(日)9:00受付、9:10~10:20
後期教室(妊娠9ヶ月以後:32週以後が対象):6/10(土)9:30受付、10:00~11:30
いずれも場所は橿原文化会館3F会議室(八木駅徒歩3分、近鉄百貨店隣)です。
初期ならびに中期教室は、申し込み多数の場合は第2部をとり行う可能性がありますので、後期と時間が異なることに注意下さい。
詳細のお問い合わせは、担当宮本までお願いします。また事前に、直接あるいはお電話でご予約いただきますようお願い申し上げます
-
- 2006.04.24
- 役に立つ?情報
4/22-23にかけて横浜で行われている日本産科婦人科学会総会・学術講演会に出席してきました。
日本産婦人科学会は日本のほとんどの産婦人科医が所属する学会で、毎年4月に開かれる学術講演会では、各大学などの先進医療機関から最新の医学的知見が発表されます。学会二日目の日曜日には毎年、テーマを決めたシンポジウムが行われ、今年は「妊娠中の栄養・代謝―妊娠中の適切な栄養管理を目指して」と、「多のう胞性卵巣(PCO)の病態生理と臨床」がテーマでした。
私は「妊娠中の栄養・代謝」のシンポジウムを聴くことができましたが、葉酸の摂取不足の問題、出生児体重の低下が児の長期予後にもたらす問題などについての討論が行われました。
妊娠中の過度な栄養制限と体重制限の問題については過去にも記しました(http://blog.livedoor.jp/sacra_lc/archives/50160771.html)。それ以外には新聞でも報道されましたが、妊婦の葉酸摂取が厚生省の推奨量を満たしていないこと、そしてそれはサプリメントの服用により改善されることが取り上げられていました。血中葉酸濃度の低下は2分脊椎などの胎児の神経管の閉鎖障害(Neural Tube defect: NTD)に関わることが報告されています。以前は日本人の野菜摂取は多いために、欧米に比してNTDは少ないと考えられていましたが、近年NTDは欧米では減少傾向にあるにもかかわらず、日本では増加傾向にあることも知られています。また葉酸代謝に関わる酵素のある遺伝子多形をもたれている方(MTHFR 677 TT:日本人では約18%の方がそうです)では、血中葉酸濃度が低い傾向があることも知られています。
現在妊娠を目指して治療中の方、すでに妊娠が成立して私の外来にこられれている方は、葉酸ともにビタミンB群を多く含む緑黄色野菜(ジュースを含む)の十分な摂取を心がけてください。また鉄分とカルシウムも不足がちになりますのでそれらも含めてバランスのとれた食事をお願いします。
場合によってはサプリメントの使用も有用です。ただしサプリメントに頼って食事がおろそかになるようなら本末転倒です。基本的には各種栄養素はバランスのとれた食事から摂取すべきであることも理解しておいてください。
-
- 2006.04.13
- 役に立つ?情報
今日のニュースで、「たばこをお吸いになる方は心筋梗塞などの心臓病の発症率が約三倍になることが厚生省班研究による大規模な疫学調査によって明らかになった」と報道されていました(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060411-00000063-mai-soci)。
以前からタバコと心臓病の関係は指摘されていましたが、これは全国の40~59歳の男女計約41,000人を対象として、1990~2001年にかけて平均11年間追跡して得られた結果です。この研究は、専門的にはプロスペクティブ・スタディー(prospective study:前方視的研究)と呼ばれる、研究者によるバイアス(主観による結果への影響)が生じにくい研究手法が取られており、参加人数も多いため非常に正確な成績であると考えられます。さらにこの研究によれば、男性の場合禁煙して2年たてばもともと吸わない人と心臓病の発症率は変わらなかったそうです。
妊娠中の母体の喫煙は、流・早産や出生児の体重の減少と関連することが報告されています。また最近は妊娠中の受動喫煙(自分が吸わなくても同室で他人が吸ったたばこの煙を吸い込むこと)の影響を報告する研究結果もあります。そして出生後の赤ちゃんの突然死(乳幼児突然死症候群:SIDS)は、喫煙者の家族に多いことが報告されています。
もしたばこを吸われている方がいらっしゃれば、ご主人様を含めて早急に禁煙されることを強くお勧めします。
-
- 2006.04.04
- 役に立つ?情報
SACRAには持田シーメンスメディカル社製の超音波診断装置があり、もちろん3D(3次元超音波)機能も付属しています。ただこの機能はまだなお発展途上の技術で、雑誌などに載っているようなきれいな赤ちゃんのお顔の写真はなかなか撮ることが出来ません。まれに”赤ちゃんが上の方、つまり母体腹壁の超音波プローべの方を向いていて、なおかつお顔の周りに十分な羊水が存在する”ような好条件が重なったときには写真のようにきれいに見えることがありますが、目がなれてくるとむしろ通常の2D(2次元画像)のほうが赤ちゃんの表情がわかりやすかったりします。
SACRAでは、通常の超音波検査(妊娠15週以後はビデオテープに録画してプレゼント)は妊婦検診のたびに毎回行いますが、3Dはカラードップラー超音波と共に妊娠22週と30週前後に行っています。実はこの詳細な超音波検査で重要なのは、3Dよりむしろカラードップラーのほうで、SACRAの詳細な超音波検査により、実際に問題が見つかり高次医療機関に紹介できた例もあります。もちろんすべての異常が出生前に分かるわけではありませんが、生まれる前にわかれば出生直後から赤ちゃんが最善の治療をうける事が可能になります。SACRAでは今後も詳細な超音波検査を続けていきたいと思っています
だからというわけではないですが、3D超音波であまり良い写真が撮れなくても、どうかご容赦下さい。
-
- 2006.03.29
- 連絡事項
5月の両親学級は以下の日程で開催します。
初期教室(妊娠5~6ヶ月:16~23週が対象):5/14(日)9:00受付、9:10~10:20
中期教室(妊娠7~8ヶ月:24~31週が対象):5/21(日)9:30受付、10:00~11:30
後期教室(妊娠9ヶ月以後:32週以後が対象):5/28(日)9:30受付、10:00~11:30
いずれも場所は橿原文化会館3F会議室(八木駅徒歩3分、近鉄百貨店隣)です。
初期教室は、申し込み多数の場合は第2部をとり行う可能性がありますので、中期・後期と時間が異なることに注意下さい。
詳細のお問い合わせは、担当宮本までお願いします。また事前に、直接あるいはお電話でご予約いただきますようお願い申し上げます
-
- 2006.03.28
- 役に立つ?情報
バージャー病という血管の病気があるのですが、私が医師国家試験を受験した十数年前には原因不明の難病とされていました。それが先日テレビで「バージャー病の病変組織から歯周病菌が検出された」との報道を目にしました。最近、全身疾患と歯周病との関連について多くの研究がなされているようです。例えば脳梗塞は、重度の歯周病がある場合は歯周病のない人に比べて脳梗塞を発症する危険が高いことが報告されていますし、糖尿病や細菌性心内膜炎と歯周病との関連も指摘されています。
産婦人科領域でも、早産・未熟児と膣炎あるいは全身の細菌感染の関連は以前から指摘されていましたが、最近では歯周病との関連が、そして歯周病治療が早産を防ぐ可能性も指摘されているようです(写真参照)
歯磨きはしているつもりでも、ちゃんと口腔内の衛生を保てているかどうかは不安ですよね。やはり歯周病も予防が大事だそうです。定期的に検診を受けましょう。
-
- 2006.03.23
- 連絡事項
おかげさまで昨年11月の開院以来、SACRAは順調に分娩予約をいただいています。そのため、今後さらに患者様へのサービスを充実させることを目的として、新たに常勤で勤務いただける助産師さんを募集することになりました。
待遇などは当院の規定に準じます。詳細はこのブログのコメント欄ではなく、メール(info@sacra-lc.com)あるいは電話(0742473822:採用担当、事務長橋本)でお問い合わせ下さい。
経験は問いませんが、やる気のある方多数のお問い合わせをお待ちしております。
7/22追記
6/19にお知らせした看護師さんの募集は終了しました。多数のご応募ありがとうございました。なお助産師さんの募集は今後も継続します。連絡先は上述のメールアドレスでも結構ですが、できれば電話で事務に直接お問い合わせいただくようお願いします。