今日SACRAではじめての帝王切開での出産がありました。それに関連して、よく御質問をいただく、帝王切開後の次の妊娠の分娩方式について、お話したいと思います。
帝王切開の後の分娩については、大きく分けて2通りの分娩方式があります。ひとつは再度の帝王切開、もうひとつは陣痛のトライアルを行って(TOL: Trial of Labor)、経膣分娩を行う(VBAC: Vaginal Birth after Caesarean sectionといいます)方法です。このTOLとVBACの考えは、全例に再帝切を行った場合の医療費の高騰を防ぐ目的で米国において行われていたものを日本に導入したものです。
しかしTOL/VBACを行う場合には、重大な合併症である子宮破裂が突発する危険があります。その可能性は高いというほどではありませんが、子宮破裂が生じた場合は母児の生命が非常に危険な状態になるため、米国では子宮破裂にそなえて緊急帝王切開を30分以内(できれば15分以内)に行うことが求められます。
しかし実際は、日本でそれができる施設はかなり限られます。
十分な設備と人員を擁する周産期センターであっても、365日・24時間すべての時間帯で、30分以内に帝王切開を行うことは困難なこともあります。
そのため周産期センターでTOL/VBACを行う場合も、患者さんにリスクを説明し、症例を選んで(前回の帝切理由が今回はあてはまらない、児頭骨盤不適合でない、自然陣痛で順調に進行する、児があまり大きくない)行うことが多いです。
以上の理由から、SACRAでは母児の安全性を優先して再度の帝王切開をお勧めすることになります。
そしてTOL/VBACをご希望の患者さんは、奈良医大に紹介しています。